歩くと床がミシミシ、ギシギシ音を立てる。古い木造の家ではよくあることですが、これは初めから音が出るように作ってあるわけではありません。ところが、音が出るように作られた床もあります。有名なのが「鶯張りの廊下」と呼ばれるもので、京都の知恩院や二条城にあり、廊下を歩くと「きゅっきゅっ」と、鶯が鳴いているような音がします。これは「忍び返し」とも呼ばれ、侵入者を防ぐためと言われていますが、実は根太が緩んだだけという説もあり、真偽のほどは定かではありません。
こういう特殊な例は別として、床は音が出ないように作るのが普通です。音が出ると階下に響き、特に当社が主力としている賃貸マンションでは、大きな問題となります。床から生じる音は床衝撃音と呼ばれ、2種類に分類されます。ひとつは靴音などの軽量衝撃音。もうひとつは子どもの飛び跳ねなどの重量衝撃音です。前者は建物完成後でも対応可能ですが、後者は床版だけでなく、周辺の構造や室の特性などの要因が複雑に関与しているので、同じ床版でも条件によって異なります。
マンションの広告に書かれている、床材の衝撃音遮断性能は、実験室で測定したものが多く、実際の建物と実験室とでは条件が違うため、同じ性能は保証できないと考えるべきでしょう。床は、音が出ないように作る方が、はるかに難しいものです。特に当社の建物は、無梁床なので、それだけで技術を必要としますが、「Abita円山」の現場重量衝撃音試験では、特級の遮音性能が計測されています。